救世主の話

 

 聖イアラポイ師が啓示を受けたのは、まだ生まれてから間もない幼少の頃というのが風説であった。しかし実際にイアラポイ師を知る人、またその人自身を目にしたことがあるものは稀であった。何故なら、町外れの竹林の奥深くに石で組まれた壮大な寺院の、さらにその奥の間からイアラポイ師が出てくることは滅多になかったからである。それでも町の人達は老若男女を問わず、あるものはいくさで傷を負い又あるものは飢えに苦しみ、幾多の悩みを抱え寺院の門前までやってくるのであった。町より遠い道のりをやって来たものもいた。その道のりは平坦な旅程ではなかった筈だが、やっと辿り着いたその顔には安堵ともたらされる救いへの期待がありありと表れていた。しかしまたその表情を複雑たらしめているのはまさにうっすらと世界を包み込もうとしている不信であった。はるか昔から続く争いの火種は尽きることなく苦しむ人々がいた。また、持てる者は持たざる者を顧みず欲望に耽溺していたのである。生きることの漠然とした不安、それが門前に集まった人々の全ての表情に暗い陰を落としているのであった。

 その聡明さ故にそうした不信を理解しているのは他ならぬイアラポイ師自身であった。建物の外を窺った時に見る民衆の顔はみな、師の心を痛めるものであった。しかし、人々が平安を自分に求めてくるということへの重圧に耐えねばならぬ、それこそはもはや宿命であった。おのれはなにを成し遂げねばならないのか。そもそも、なぜゆえにおのれが選ばれたのか。そう問い続ける行こそは苦しみであった。苦行であった。民が光を求めて集う、その光を見出さなければならぬ、その宿命を背負っての苦行であった。

 

 ぶっちゃけオレさとっちゃったわけじゃねえもんな。なんかそれっぽいこといったらまわりが本気にしちゃってさ。神が怒ってるとかなんとかいったら、たまたま台風の当たり年で。そんで人気でちゃったんだよな。でも、もうそろそろ次のネタ出さねえとやばいよな。弟子とかついちゃってるもんな。あいつら堅苦しいやつらばっかりでさ、おちおち酒も飲んでらんねえよ。ああ、どうすっかな。サイン入りツボはもう売れねえだろうな。血混ぜた水とかよそでやってっけどオレだめなんだよな。血見るの怖いんだもん。なんとかしなきゃな。たまには高い酒飲みたいもんな。それこそ神様どうにかしてくれ、だよな。ありゃ、つまみがねえよ。酒もなくなっちゃった。あいつら気がきかねえなあ。それにしてもなんとかしなきゃなあ。どうすっかな。うえ、飲みすぎた、気持ち悪いや。

 

 聖イアラポイ師が姿を現したのは夜明け前であった。その顔には苦悩が刻まれ、日々の心労の為か思いつめた精神の為か、青白さが特と目につくのであった。師は弟子達を集めた。その集まった直弟子達や更に多くの孫弟子達を見渡すと、イアラポイ師は溜めていた気を吐き出すがごとく深い息をついたのである。その呼吸さえも凛々しく輝いていると若き弟子たちは思うのであった。彼等はその光景を目に焼き付けるように見つめるのであった。それは何と厳かな様であったろうか。やがてイアラポイ師の語りだしたその言葉は、囁くような口調であったにもかかわらず部屋の隅々までいきわたるのであった。言葉はこうであった。

「私は神との約束を果たさねばならない。試練を受けなければならない。そして神をこの身に感じねばならない。ここにいるすべてのものよ。祈りなさい。信じなさい。その思いをひとつにしなさい。私は荒野に出る。神と語らねばならぬのだ。何人もついてくるのは許されない。それは、私だけの使命であるのだから。しかしあなたがたの思いがひとつになれば、それは神に届くでしょう。祈るのです。そして信じるのです」

誰もが息を呑む、その気配が空気に張り詰めたのであった。まさか、聖イアラポイ師自らが、獣や盗賊共の跋扈する荒野へ出ようとは。その揺るぎない決意にあるものは涙し、またあるものは膝をついて平伏したのであった。

 夜明け、痩せこけた騾馬に乗った聖イアラポイ師の顔にはある種の悦びがあった。それは、なんと粛々とした出立であるか。その過酷な命運を思い、弟子達はまたも涙に暮れるのであった。馬を曳いた直弟子のウファリスが問うたのは、まさに試練の始まりである寺院の正門を潜らんとするその時であった。

「師よ。ひとつだけ聞くのをお許しください。師はどのような方法で神と対話なさるのでしょうか」

聖イアラポイ師の返答はこうであった。

「私には聖なる器があるのです。その器が私を神に導いてくれるでしょう。さあ、おまえは戻りなさい。そして祈りなさい。私のために祈りなさい」

 

 ふう、とりあえず逃げ出したぜ。大体よ、オレに頼りすぎだっつの。たまにはてめえらで考えろよな。世の中よくしたいんならさ。まあそりゃオレだっていい世の中になってほしいけどな。でも他力本願ってのはよくないね。なあんつって、へへ、オレも。ジャカジャーン!神様直通ケーターイ!これタイムマシンでやってきた未来型ロボットにもらったんだよな。いつだって神様につながるっていってたもんな。まさか本物の神様なら妙案あんだろ。みんな見えなくなったところで、さっそくかけてみっか。もしもし、神様?あのね、もしもし?もしもし?もしもーし!なんだよう、ノイズばっかで聴こえねえよ。電波、関係あんのかよ神様って。もしもし?いるんでしょ、神様?もしもし?もしもーーし!うわ、向こうで切りやがった!信じらんねえ!こっちは困ってんのに!どうすっかな、おお?メアドあんじゃん!カミサマドット...よっしゃメールしたろ。世の中よくしてください、と。あとオレのフトコロ具合いもよくしてください、と。オーケー、送信!

 

 返事こねえよ!夜中だよ!どうすんだよ、この世界! 

 

LIVE at

 

荒川沖ジミヘン

 

2024/5/25 sat 

 "ジミヘンLIVE" 

 

act:

はちろうはぢめ

 

 start:20:00

投げ銭

 

 

荒川沖ジミヘン

 

2024/6/2 sun

"ユウジキクチ

HOPEFUL TOUR" 

 

act:

ユウジキクチ

ブレーメン

 

open:19:30start:20:00

charge:1オーダー+投げ銭  

 

水戸90EAST

 

2024/6/8 sat 

 "サウンドホールから!

コンニチワ!Vol,23" 

 

act:

中村

武蔵野カルテット

高橋賢一

for the one

劇画タイフーン

四畳半プリン

SCREW-THREAT

 

open:17:00start:17:30 

 Charge:¥2,500(1drink+満月ポン)込

 

荻窪クラブドクター

 

2024/6/13 thu

"club doctor 24th ANNIVERSARY" 

 

act:

SHOTGUN BLADE+10,000ケルビン

ザズエイラーズ

AZU

 

open:19:00start:19:30

charge:¥2,000(+1d)